#1 シェアリングスペース、みんなどうやって使っているの?

SMASSO

空間活用ソリューション「SMASSO」を提供し、自身もシェアリングスペースを運営する株式会社スペースコネクト代表取締役 福西佐允がシェアリングスペースについて語るシリーズ。第1回目はシェアリングスペースとは?という基本からユーザーの様々な使い方についてお話しします。

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福西 佐允(株式会社スペースコネクト代表取締役)
1972年生まれ 大阪府出身。
2018年に副業でシェアスペース運営をはじめる。
2020年9月株式会社スペースコネクト設立。
累計5000件以上のスペース貸し出し経験から、豊富な運用ノウハウを持つ。

シェアリングスペースとは?

通常「スペース」とは、月極の契約者、もしくは所有権を持っている人が占有するものですが、それを複数の人で時間貸しの利用権を持ち合わせて利用するというのが「シェアリングスペース」です。何も置いていないシンプルなスペース、貸し会議室、最近ではスポーツジムなど、そして昔からある音楽スタジオや撮影スタジオといった空間もシェアリングスペースです。

「レンタルスペース」というと、個人が独占して場所を賃貸するイメージがありますが、「シェアリングスペース」は場所だけでなく設備やサービス、つまりハードとソフトを含めた空間全体を短時間で利用するイメージでしょうか。文字通り、複数人が時間を異にして一つの空間を共有します。

シェアリングスペースはどう使われている?

昨今は多様な使われ方をしています。たとえば私はオーナーとして2つのシェアリングスペースを経営していますが、文化センターやスクールでやっていそうな習い事教室としてご利用いただくことがけっこうあります。お花やお習字、そろばん教室などですね。他にヨガ、エクササイズなどスポーツスタジオのような利用や、商談、法律相談、労働組合の労使折衝といった従来オフィス内で行われるビジネスでご利用いただく方も多くいらっしゃいます。

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最近わりと多いのは、民放のドラマ撮影や収録、メルカリなどへの出品物の撮影でのご利用です。見物客がいない中で落ち着いて撮影ができたり、出品する商品をおしゃれな空間で撮影をすることでより魅力的に見せることができたりと、言われてみると「なるほど」という使い方があり、お客様に教えていただいている感じがしますね。

シェアリングスペースの使われ方に変化はあった?

ようやく緊急事態宣言が解除になり、シェアリングスペースは多用途で盛況です。そして最近、いくつかの状況が変わってきたと感じています。ポイントは3つです。

1つめは、「テレワーク」という文化が定着したことです。以前はそのような文化がなかったため、機密を守ることができる個室を探そうなどというモチベーションが利用者にはなかったと思いますが、現在多くの企業は喫茶店やカフェでのテレカン(遠隔会議・テレビ会議)禁止している傾向があります。コロナ禍のため、テレワークを認めざるを得ない状況ですが、企業内の会議室で語られる機密性の高い内容を、家庭内とはいえ業務に関係ない家族がいる場所では話されるのは本来望ましくないですよね。ましてやカフェなどのパブリックで語るというのは、社員も情報漏洩のリスクがあるので絶対にやめて欲しいと思っているはずです。

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加えて、「テレワーク禁止」という大手カフェチェーンも出てきています。喫茶店やカフェ側にとっても、コーヒー1杯で長居されると店の回転率が下がるわけですから、当然の動きかなと思います。

といった事情により、物理的には情報セキュリティが守られているシェアリングスペースやテレワークブースの利用が増えています。

2つめは、テレワーク用途がスペース利用の中核に変わりはありませんが、緊急事態宣言中は18時以降の利用者がいなかったところ、宣言が解除されてからはパーティやイベントでのご利用が増えつつあります。

3つめは、シェアリングスペースが広く認知されるようになったことです。たとえばお花の教室、メーキャップレッスンなどで利用する場合、昔は自宅で教室をする場所がない講師が、とりあえずの場所を確保するために素っ気ないレンタルスペースを使っていた頃がありましたが、今は教室をやるのに相応しい場所としてシェアリングスペースを借りてくださっているように思います。昔よりも、シェアリングスペースの選択肢も増えていますし、教室に参加する生徒さんからも「わざわざ場所を借りてくれていた」とポジティブな印象を持ってもらえるのではないでしょうか。場所を借りて教室を開催することが好意的に受け止められる雰囲気が醸成されたという気がしています。

コロナ禍でユーザー層に変化はあった?

コロナによって、シェアリングスペースのユーザーカルチャーが変わりました。

シェアリングスペースが始まった当初の利用者は、たんなるお客様ではなかったのです。どういうことかというと利用者もスペースを運営・管理するサービス提供の役割を一部担ってくれていました。例えば、頼まなくても利用が終わったら掃除機をかけてくれたり、備品が壊れているときや、ホワイトボードマーカーが出なくなったときにわざわざ教えてくれたりしました。

これはシェアリングスペースに限ったことではないと思いますが、何かお客様が本当に必要だと思う商品やサービスというのは、初期のユーザーのようなコアなファンは自分たちがもっと快適に使うためにその商品やサービスを応援したり、率先して協力してくれたりしますよね。そしてサービスが一般化すると、コアなファン層が薄まり、純粋なユーザー(お客様)が増えるといったような。

シェアリングスペースもコロナ禍で認知度を上げ、広く利用されるようになったからか、今は昔のように進んで管理を手伝ってくれるお客様は少なくなくなりました。だからと言って、それが悪いというわけではないんです。それだけシェアリングスペースが一般の方にも伝わり、広まってきたという事ですから、喜ばしいことです。

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忙しいビジネスマンは仕事ができればいいと割り切ってスペースを使いますから、なかなかコアなファンになっていただくのは難しいのですが、それでも「この場所が好きです」と言ってくださる方はいらっしゃいます。シェアリングスペースの数は増えていますが、その中でもお客様に選ばれるシェアリングスペースはどんなところなのか、日々お客様からのフィードバックや様子を観察することは大切です。例えば、ホワイトボードマーカーやトイレットペーパーは絶対に切らさない、清潔な空間を維持する、こういう小さな当たり前のことができるかどうかが、実は大きな分かれ道だったりします。これからもお客様から選ばれるシェアリングスペースになるよう、やっていきたいですね。

*次回はシェアリングスペースの運営テクニックについてお話しします。

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